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ご挨拶

図の説明:生命と電気化学
生体膜を介したイオン移動や薬剤輸送、酸化還元酵素による電子移動、神経伝達機構の解明など

生体機能化学研究室へようこそ

生体膜を介したイオン移動や薬剤輸送、酸化還元酵素による電子移動、神経伝達機構の解明など当研究室では、電子とイオンの流れに関わる生物の高度な仕組みを化学する「生物電気化学」という学問領域を研究しています。生体内では、電子とイオンの流れによって、生命活動を維持する「エネルギー」が生み出され、生体膜を介した薬物輸送や情報伝達が起きています。また、酸化還元酵素は、電子移動を介した物質-エネルギー変換において重要な役割を担っています。これらの現象に対して、以下のテーマを掲げ研究室一丸となって研究に取り組んでいます。

【テーマ1】生体膜が関わる生命現象を原子/分子/タンパク質/細胞レベルで解明
【テーマ2】酸化還元酵素が関わる生命現象原子/分子/タンパク質/細胞レベルで解明
【テーマ3】テーマ1や2に関する生体機能に着目し、自然が持つ高度な機能を生体模倣し、バイオミメティックデバイスを創出

研究内容を詳しく知りたい方は、研究プロジェクト研究紹介動画をご覧ください。

また、例年、外部の大学からも多くの学生が当研究室を受験し、一緒に研究をしています。大学院に興味のある方は、まずは「大学院志望の方へ」ページをご覧になってください。「少し生物電気化学に興味があるなと感じた方」、「研究内容が面白そうだなと感じ方」、「異分野に挑戦してみたい方」、「何かきっかけや気付きを感じた方」、是非一度、研究室訪問や見学をしてみませんか?

研究室訪問や見学は随時受け付けており、オンラインでも対応可能です。より詳細な情報や受験に向けたアドバイス、学生との懇談などもアレンジできますので、まずは気軽にご相談ください。

問い合わせ方法は、2つです。(どちらでもOKです)

① 白井宛に直接メール(shirai.osamu.3x@kyoto-u.ac.jp)
② 問い合わせフォーム(専攻HPの生体機能のリンク)を利用する ※必要項目をまとめておりますので便利です。


 
 

メンバー

教授 白井 理

shirai.osamu.3x@kyoto-u.ac.jp

075-753-6392

農学部2号館 206号室

准教授 北隅 優希

kitazumi.yuki.7u@kyoto-u.ac.jp

075-753-6393

農学部2号館 208号室

助教 宋和 慶盛

sowa.keisei.2u@kyoto-u.ac.jp

075-753-6393

農学部2号館 208号室

 

ポスドク 足立 大宜               
補佐員 中村 清楓  
OA 波田 祐希  

 

<学生>

D4 高野 能成 社会人
D3 鈴木 洋平 日本学術振興会特別研究員 (DC1)
D2 莊 葦白 台湾からの留学生
D1 袁 雨聡 G30
D1 小林 亜美  
M2 中西 瑳与子  
M2 中村 一統  
M2 府川 江央留  
M1 市川 小夏  
M1 稲田 彪  
M1 児玉 創太郎  
M1 武部 幸佳  
B4 安部 結思  
B4 石井原 臣之助  
B4 紀之定 玲司  
B4 高橋 諒  
B4 松村 圭将  

 

研究室の歴史

図1:初代教授志方益三とJ. Heyrovsky教授

電気分析化学の先駆けとして

現在の生体高分子化学分野・生体機能化学分野は1925年5月に設置された林産化学講座にその起源をもつ。志方益三が助教授として着任し、同年12月に教授に昇任した。本講座においては、ポーラログラフィーの研究が進められた。ポーラログラフィーはプラハのJ. ヘイロフスキー教授(1959年ノーベル化学賞受賞)によって創始された電気化学の研究領域で、プラハに留学中の志方とヘイロフスキーにより「ポーラログラフ」が発明された。本法は日本でも「有機化合物の電気還元圧に関する研究」として発展し、発酵産物の研究、生体試料・天然試料中の微量重金属の定量分析にも多くの成果をあげた。

 1942年に志方は退官し、舘 勇が本講座を担当した。ヘミセルロースおよびリグニンの化学と応用研究、界面電気化学の基礎的研究、機械振動電気変換器やコロイドの安定性の研究が進められ、「ポーラログラフ電極反応論」という理論体系が構築された。

 舘は1962年に退官し、1964年に助教授千田が本講座を担当し、1965年に教授に昇任した。また1969年に本講座は林産化学講座から天然高分子化学講座と改称された。ポーラログラフィーの研究は、電気分析化学の体系的研究として展開され、生物電気分析化学の研究へと発展した。酸化還元酵素の電気化学研究は後にバイオエレクトロカタリシスの研究へと発展した。メディエータ電子移動型酵素電極の電極反応過程が詳細に解析され、バイオセンサーやバイオリアクターへの応用が試みられた。一方、メディエータを要しない直接電子移動型酵素電極反応も検討された。生体膜でのイオン透過を念頭に置いた油水界面でのイオン移動についても研究が進められた。この研究は電気分析化学の中にイオン移動ボルタンメトリーという新領域を創成し、市販されるイオンセンサーの基本原理となっている。光依存性の起電性イオンポンプの発見とその電気生理学的解明はこの分野の研究に大きな影響を与えた。

 1990年に細胞物理化学講座(現在の生体機能化学分野)が設置され、1992年に助教授池田篤治が教授に就任した。ポーラログラフィーの概念に基づき、タンパク質、特に酸化還元酵素を用いた電気化学測定を中心とする研究が進められ、バイオエレクトロカタリシス(酵素電極反応)の概念を提唱し、電極が酵素反応の電子受容体もしくは電子供与体として働く「酵素機能電極」を実現した。さらに、第二および第三世代のバイオセンサーの研究が開始された。これらの知見は医療分野に適用され、血糖センサーとして実用化されている。また、酵素反応に基づくポーラログラフ触媒電流について定常状態反応電流を定式化し、さまざまな酸化還元酵素の酵素反応速度解析が可能になった。酸化還元酵素と基質を組み合わせた様々なバイオ電池が構築された。また、微生物細胞を用いたメディエータ型電極でも電流応答することを見出し、微生物触媒電流を用いることで、微生物の増殖速度測定やエネルギー代謝機能解析も可能となった。

 2005年に池田は退職し、加納健司が生体機能化学分野を担当した。バイオエレクトロカタリシスをさらに追及し、研究を深化させた。実用的な生物電気化学デバイスの構築においメディエータ電子移動型(MET)酵素電極反応は有用であり、さまざまなメディエータ固定化法を考案し、複数の酵素反応がリポソーム内で連結できることも明らかにした。メディエータを使用しない直接電子移動型(DET)酵素電極反応が精査され、当時世界最高の電流密度が実現された。また、バイオセンサーに関する従来の反応系やメディエータの問題点を指摘し、解決法や適したメディエータの選択の方法論を確立した。生体膜を介したイオン透過を解明するため、人工脂質二分子膜を用いたイオン透過の電気化学的解析法を確立し、疎水性イオン、イオンチャネルおよびキャリア化合物共存下におけるイオン透過についても明らかにした。これらの知見を基に、神経軸索での活動電位の新規伝播機構や薬物輸送について自由エネルギー直線関係(LFER)に基づく新たな解析法を提唱した。

2020年3月、加納が定年退職した後、4月に白井理が分野を担当し現在に至っている。

図2:当研究室所蔵の初代ポーラログラフィー装置二号機